【Weekly Africa Biz】2026年9月第4週:Quickmart上場へ、ケニア銀行38行を独自採点、Ziplineが西アフリカで8年契約

今週は、アフリカビジネスに関する記事を7本公開しました。ケニアでは、店舗数・売上高ともに2位のスーパーQuickmartがナイロビ証券取引所への上場計画を発表しました。
ケニア中央銀行(CBK)の年次報告をもとに、39の銀行を「大きさ」と「健全さ」の2回に分けて並べ直した連載も完結しています。
西アフリカでは、ドローン物流のZiplineがコートジボワール政府と8年契約を結び、ナイジェリアでは3億ドル(約471億円)の分散型電力ファンドが始動しました。
ナイロビの盆踊り、ケニアの通信を読む6つの数字まで、同じ国を違う物差しで測り直した週です!
今週のアフリカビジネス:3つの注目トレンド
今週公開した記事群を俯瞰すると、大きく3つの動きが見えてきます。

1つ目は、同じデータでも物差しを変えると、順位も市場の大きさもまるで変わると分かった週でした。
ケニアの銀行39行を、CBKの市場規模指数で並べると首位はKCBで、上位8行が69.7%を占めます。
ところが、不良債権比率・自己資本・収益力など7つの指標で弊社が独自に採点すると、1位は規模13位のCitibankでした。
大手8行で最も上位のAbsaでも38行中7位、規模2位のEquityは22位です。通信の数字も同じ構図でした。
ケニアの5G契約はモバイルデータ契約全体の3.3%にすぎませんが、データ消費では14.5%を占めます。
ネットワークに接続されたスマートフォンは人口比98.0%なのに、インターネットを使っている人は35.0%です(後者は2023/24年の住宅調査にもとづく値で、直接は比べられません)。
Quickmartの企業価値も、アフリカの上場スーパー9社の平均PER(株価収益率)で測ると約349億シリング(約426億円)、PSR(株価売上高倍率)で測ると約187億シリング(約228億円)と、2倍近くずれました。
ケニアで取引先を選ぶときも、市場の大きさを見積もるときも、ひとつの数字で決めずに物差しを2つ以上並べることが大切だと思います。

2つ目は、ケニアの人々が毎日使うスーパーと銀行で、持ち主の顔ぶれが変わりつつあると見えた週でした。
Quickmartの上場は、新しい株を出さない「売出し」です。売り手は、モーリシャスの投資ファンドAdenia Partnersが運用するファンドと創業者らが出資する持株会社で、2019年の取得時に2社合わせて24店舗だったチェーンを72店舗まで広げ、投資の回収に動きました。
投資ファンドがケニアの株式市場を出口に選ぶのは珍しい例です。アフリカ投資でいつもつきまとう「その株を誰に売るのか」という問いに、ひとつの答えが示されました。
首位のNaivas、3位のCarrefourを含め、3社はいずれも外国の資本が深く関わっています。
銀行でも、ナイジェリアのZenith BankによるParamount Bankの買収、南アフリカのNedbankによるNCBA株式の最大66%の取得を、CBKが2026年に承認しました。
2029年末に最低中核資本が100億シリング(約121億円)へ上がる規制を前に、2025年末時点で39行中23行がこの水準に届いていません。
一方で、日本の商品をケニアの消費者に届ける入口も見えています。9月19日のAfrica Bonodoriは、今年初めて入場料5,800シリング(約7,000円)を取りながら、主催者によると2,500人以上が集まりました。
上場で数字が表に出るスーパーの棚は交渉の相手、年に一度の祭りの屋台は商品を知ってもらう場です。
日本の食品・日用品メーカーにとって、どちらもケニアの売り場を知る手がかりになります。

3つ目は、アフリカのインフラを「誰がお金を払い続けるのか」という視点で見た週でした。
Ziplineとコートジボワールの8年契約では、倉庫、コールドチェーン(低温物流)、追跡、配送の運営費を、政府が8年間払います。
米国務省が最大1億5,000万ドル(約236億円)で初期費用を持ち、運営費は各国が払う「成果払い」の枠組みが、国の長期契約として形になった一例です。
ナイジェリアの3億ドルのDREファンド(分散型再生可能エネルギーファンド)も、同じ問いへのひとつの答えです。
未電化人口が世界最多の約8,680万人の国で、ミニグリッド(小規模な電力網)1件、太陽光設備1件では小さすぎて、大きな投資家のお金は入りにくい。
そこで案件をファンドという器に束ね、世界銀行やNSIA(ナイジェリア政府系投資庁)の公的資金を呼び水に、民間資金を呼び込みます。
どちらの記事でも、目を引くのは技術より「お金を流す仕組み」のほうでした。仕組みが動けば、倉庫、保守、スマートメーター、データ管理といった周辺の仕事が生まれます。
日本企業が入り込む余地は、ドローンや発電設備そのものより、この周辺にあるのかもしれません。
ただし、Ziplineの契約額は公表されておらず、DREファンドも当初の5億ドル構想との関係がはっきりしていません。
発表された計画と、実際に動いているものを分けて見ておきたいところです。

今週のアフリカビジネスニュース:記事一覧
【9/21】ナイロビでガチの盆踊り!Africa Bonodori 2026に見た、ケニアに根づく日本文化の熱!〜イベントレポ〜

入場料5,800ケニアシリング(約7,000円)。これまで無料だった日本の夏祭りが有料になっても、来場者は昨年より増えました。
9月19日、ナイロビ北部の牧場で開かれたAfrica Bonodori 2026には、主催者によると2,500人以上が集まっています。
日本の夏祭りで実際に使われているやぐら、和太鼓や書道のステージ、お笑いコンビのビックスモールン、GochiとJOTOの屋台の長蛇の列。
名物の「一休さん」の主題歌では、盆踊りの輪でオタ芸まで飛び出しました。
8月のOTAMATSURIと並ぶナイロビの2大日本文化イベントが、可処分所得のある層に日本の食や雑貨を届ける入口になりつつある点も考えています。
受付を担当した弊社インターン生の裏方目線も交えたイベントレポです。
▶ 記事を読む
【9/22】ケニアの今を6つの数字で読む!5G契約210万件、Starlinkは固定ネットの1%、サイバー脅威111億件

3.3%の契約が、14.5%のデータを使っている。ケニアの通信規制当局(CA)の最新統計で、5G契約は2026年6月末に210万3,217件と初めて200万件を超え、5Gのデータ消費量は1年で約3.1倍になりました。
固定インターネットは32.4%増えた一方、日本で話題のStarlinkのシェアは1.0%です。
M-Pesaのシェアは88.8%で、1年で2.1ポイント下がりました。
年間111億件のサイバー脅威は「攻撃が成功した数」ではない、という定義の話も押さえています。スマホ接続は人口比98.0%でも、インターネット利用者は35.0%。
物価6.6%、ディアスポラ送金を加えた6つの数字で、伸びている側と取り残されている側の両方を最新の数字で更新する記事です。
▶ 記事を読む
【9/23】【2026年最新】ケニア銀行ランキング2025!KCB・Equityなど39銀行の業界地図を5年間の推移で追う〜前編〜

5年で総資産を81%増やし、2位のEquityとの順位を入れ替えたのがKCBです。
ケニア中央銀行(CBK)の銀行監督年次報告書2021〜2025年版をつなぎ、39行の業界地図を5年の推移で追いました。
業界の総資産は8.35兆シリング(約10.1兆円)、税引前利益は17.7%増の3,063億シリング(約3,700億円)。
収入が減るなかで増益を支えたのは、預金金利の低下で969億シリング減った金利費用です。
CBKの名簿でKCBに次いで古いStandard Charteredは、市場規模指数が5%を割り込み、大手の区分から外れました。
不良債権は金額で並べるか比率で並べるかで見え方が変わること、銀行エージェント網の85%以上を上位3行が持つことにも触れています。
▶ 記事を読む
【9/24】ケニア2位のスーパーQuickmartがIPOへ!Naivas・Carrefourと競うケニア小売市場の現在

Quickmart自身は、この上場で1シリングも受け取りません。ケニアで店舗数・売上高ともに2位のスーパーQuickmartが、9月23日にナイロビ証券取引所への上場計画を発表しました。
唯一の株主が発行済み株式の50%を売り出す「売出し」で、募集は9月30日ごろに始まる予定です。
売上高は2025年に504億シリング(約616億円)、純利益は4年で約8倍になりました。
店舗はすべて賃借し、商品の多くは仕入れ先が店に直接届ける「持たない」出店モデルが、薄い利幅の商売を支えています。
首位Naivas、3位Carrefourとの比較、3社とも外国資本が深く関わる構図、日本の消費財メーカーが知っておきたいケニア競争庁の「買い手の交渉力」の監視までを整理しました。
▶ 記事を読む
【9/25】Ziplineがコートジボワールと8年契約!豊田通商も出資したドローン企業、医療物流を全国10拠点へ

人口のおよそ3分の1にあたる1,200万人以上に、ドローンで医療品を届ける計画です。
米国のZiplineが、コートジボワール政府と8年間の官民連携(PPP)契約を結びました。
2023年から中西部ダロアの1か所で続けてきた配送を、全国10拠点・2,200以上の医療施設へ広げます。
ダロアでは2023年以降、ワクチン約200万回分を含む355万点以上の医療品を届けてきました。
背景には、米国務省が最大1億5,000万ドル(約236億円)で初期費用を持ち、運営費は各国が払う「成果払い」の仕組みがあります。
一方で、契約額は非公表で、2021年に掲げた4拠点の計画も、今回の発表の時点で動いているのはダロアの1か所です。
2018年に出資した豊田通商と、長崎県五島列島での配送にも触れています。
▶ 記事を読む
【9/26】ケニアの銀行「財務健全性ランキング2025」!大きい銀行ほど健全なのか、38行を独自採点〜後編〜

大きい銀行ほど健全なのか。前編と同じ5年分のデータで、不良債権比率、総自己資本比率、ROA、ROEなど7つの指標による100点満点の独自スコアを作り、38行を並べ直しました。
1位は規模13位のCitibank(87.1点)で、上位5行のうち4行は支店が8つ以下です。
大手8行ではAbsaの7位が最も高く、規模2位のEquityは22位でした。
上場11銘柄のPBR(株価純資産倍率)との関係、2029年末に100億シリング(約121億円)へ上がる最低中核資本に23行が届いていないこと、外資による銀行の買収まで扱っています。
弊社がメインで使うI&M Bankの順位と、数字に表れない使いやすさの話も書きました。
▶ 記事を読む
【9/27】ナイジェリアが3億ドルのDREファンド始動!送電網を待たない「分散型電力」が広がる理由

ナイジェリアで電気を使えない人は約8,680万人で、世界で最も多い数です。
9月20日、ニューヨークの国連総会にあわせて、3億ドル(約471億円)規模の「Nigeria Distributed Renewable Energy Fund」が商業的な立ち上げを迎えました。
ナイジェリアの政府系ファンドNSIAとインフラ投資のAfrica50が共同で運用し、世界銀行がIDA(国際開発協会)を通じてまず2,500万ドル(約39億円)を拠出します。
投資先は、ミニグリッド(小規模な電力網)や独立型の太陽光です。通貨の変動、料金規制、現地通貨の資金不足という3つの壁と、2025年の発表では「5億ドル」だった数字がそろわない点も整理しています。
2020年にPowerGenへ出資した住友商事の例にも触れました。
▶ 記事を読む
編集部ピックアップ:9/26「ケニアの銀行『財務健全性ランキング2025』」
今週の注目は、ケニアの銀行ランキングの後編です。ケニアで現地法人を作る、取引先に支払う、現地の銀行と組む。
そのとき多くの方が、まず大手の銀行から比べ始めると思います。今回の採点で見えたのは、規模の順位と健全さの順位が大きくずれることでした。
規模2位のEquityは、ROEが32.3%と大手・中堅19行で最も高い一方、不良債権比率18.3%、総自己資本比率16.5%で点数を落としています。
反対に、大手の区分から外れたStandard Charteredは、不良債権比率5.5%で19行中7位に入りました。
区分から外れたことと、財務が弱っていることは、分けて見る必要があります。
ただ、健全性1位のCitibankは支店が2つの法人向け中心の銀行で、11月末にはモンバサ支店も閉じる予定です。
財務の良さと、日々の入出金での使いやすさも、また別の物差しです。記事では、規模、財務健全性、PBRという市場の評価、支店の数の4つを並べて見ることを提案しています。
さらに、財務指標が良くても中核資本の絶対額が小さい銀行は、2029年末に向けて資本の積み増しや合併・買収などの対応を求められます。
提携先や出資先として銀行を見るなら、数年後に相手がどんな形になっているかまで考えておきたいところです。
なお、このスコアは公開データにもとづく弊社独自の参考情報で、CBKの公式な評価や、特定の銀行との取引・投資を勧めるものではありません。

今週の数字
210万3,217件:2026年6月末のケニアの5G契約数。初めて200万件を超え、1年で68.6%増えました
35.0%:ケニアでインターネットを使っている人の割合(2023/24年の住宅調査にもとづく値)。ネットワークに接続されたスマートフォンは人口比98.0%です
1.0%:ケニアの固定インターネット契約に占めるStarlinkのシェア(2万7,616件)。市場全体は1年で69万件増えました
87.1点:弊社独自の財務健全性ランキングで1位だったCitibankの点数。規模では13位、支店は2つです
23行:2029年末の最低中核資本100億シリング(約121億円)に、2025年末時点で届いていないケニアの銀行の数(39行中)
72店舗:上場を発表したQuickmartの店舗数。2019年にAdeniaが取得したときは、Tumainiと合わせて24店舗でした
1,200万人以上:Ziplineがコートジボワールの全国10拠点でカバーする計画の人数。人口のおよそ3分の1です
約8,680万人:ナイジェリアで電気を使えない人の数(2023年)。世界で最も多く、日本の人口の約7割にあたります

アフリカビジネスの「いま」を、毎週お届けしています。
AXCEL AFRICAは、日本とアフリカ諸国を繋ぎ、社会課題解決型ビジネスを共創することで、アフリカの持続的成長に貢献します。
ケニア拠点を軸にアフリカ主要国をカバーし、市場調査・現地パートナー連携・事業開発支援を提供しています。
アフリカ市場への参入をご検討中の方は、お気軽にご相談ください。
noteはこちら:https://note.com/bon0404



