アサヒHDによるEABL買収が示す、東アフリカ酒類市場の現在地!
- Hiroshi Yokoyama
- 2025年12月29日
- 読了時間: 3分
2025年12月17日、日本のアサヒグループホールディングスが英酒造大手Diageoの東アフリカ酒類事業を約4,656億円で取得すると発表した。
この取引により、ケニア・ウガンダ・タンザニアを中心に事業を展開する東アフリカ最大の酒類メーカーEast African Breweries PLC(EABL)の株式65%をアサヒが間接的に保有することとなり、地域経済・消費市場の双方で大きな注目を集めている。

東アフリカ最大の酒類メーカーEABLとは!?
EABLは1922年にケニアで創業され、100年以上の歴史を持つ「Tusker」をはじめとするローカルブランドと、「Guinness」「Smirnoff」「Johnnie Walker」などのグローバルブランドを併せ持つ「Total Adult Beverage(TAB)」企業である。
ビール、スピリッツ、成人向けノンアルコール飲料までを網羅し、幅広い価格帯と消費者層をカバーする点が最大の特徴だ。

事業はケニア、ウガンダ、タンザニアを主軸に6カ国へ展開され、農業支援から製造、物流、販売までを一貫管理する「Grain to Glass」の垂直統合モデルを採用している。

2025年度(2024年7月〜2025年6月)の業績を見ると、EABLはインフレや増税、購買力低下といった逆風下にありながらも堅調であった。
売上高は前年比4%増の1,288億ケニアシリング、税引後利益は12%増の122億ケニアシリングを記録し、売上成長を大きく上回る利益成長を達成している。

販売数量の伸びは限定的であり、価格改定やプレミアム化、コスト管理によって「利益の質」を高めるフェーズへ移行していることが読み取れる。
EABLの競争優位を支える3つの強み
競争優位性の源泉は大きく三つに整理できる。第一に、6万人以上の農家と連携する原料調達体制であり、供給の安定と農村経済への還元を両立している点である。
これはESG評価の向上のみならず、政府との関係構築や制度対応における重要な基盤ともなっている。

第二に、ローカルとグローバルを融合した強力なブランドポートフォリオであり、所得階層の分化が進む市場に柔軟に対応できる。
第三に、データとデジタルを活用したRoute to Consumer(RTC)戦略で、流通・在庫管理・販売実行力の高度化を進めている点である。
プレミアム化を軸とした成長戦略とESG戦略
中長期の成長戦略は、「Vibrant Beer」「Explode Premium」「Win in Mainstream Spirits」「Shape New Frontiers」という4つの戦略ピラーで構成される。
特に2025年度はプレミアムカテゴリーが前年比10%成長を遂げ、量より価値を重視する戦略の有効性が示された。
これは東アフリカ市場における所得二極化という構造変化を的確に捉えた結果である。
ESG面では、Diageo由来の「Spirit of Progress」を軸に、水使用量削減、再生可能エネルギー比率向上、女性管理職登用などで具体的成果を上げている。
ESGは単なるCSRではなく、操業リスク低減とブランド信頼性を高める経営基盤として組み込まれている点が特徴的だ。
違法酒・税制・為替が突きつける構造的課題
一方で、違法酒市場の拡大、物価上昇によるダウントレーディング、為替変動、酒税制度変更、気候変動による原料リスクといった構造的課題は依然として大きい。
特にケニアでは違法酒が市場の約6割を占めるとも言われ、企業努力だけでは解決困難な問題である。
通貨安定による為替差益改善など明るい材料もあるが、政策環境との相互作用が成長の持続性を左右する。

東アフリカ消費市場を読み解く代表事例
総合すると、EABLは東アフリカにおいて「数量拡大」から「価値創出」へと舵を切った代表的企業であり、プレミアム化、デジタル、ESGを統合したモデルは、日本企業や投資家が同地域の消費市場を理解するうえで極めて示唆に富む存在である。
今回のアサヒHDによる買収は、こうしたEABLの進化と東アフリカ市場の成熟度を国際的に裏付ける象徴的な出来事であると言える。

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