コロナ禍をきっかけに、アフリカ地域では薬の域内生産が課題として注目されてきました。当時は先進国で新型コロナの処方薬が開発、流通されましたが、先進国間で確保競争が激化し、途上国、特にアフリカで十分な量を確保することが困難になったためです。
コロナ禍が落ち着いた昨今でも、新たな感染症リスクに対処するため、アフリカでの現地製造を促す動きが継続しています。
米国を拠点とする医薬品製造会社Med Aditus Pharmaceuticals社は2月7日、ケニア西部キスム県にあるGreat Lakes University of Kisumu (GLUK) に16億シリング(約16億円)の工場を建設する予定を発表しました。
今回締結されたコンセッション契約で、同社は県政府など共に高品質の補助金付き医薬品を製造することを約束しました。
県知事、サプライチェーン強化に期待
キスム県知事のアニャン・ニョンゴ教授は、このプロジェクトが雇用機会を創出し、地域と国全体の医療供給を促進すると期待を述べました。
同知事は、「この投資により、年間20億錠の医薬品が高い補助金付きで生産されます。医薬品を地元で生産することで、Med Aditus社はケニアの(医薬品に関する)輸入への依存を減らし、サプライチェーンの安全性を向上させ、特に新興・再興の疾病に直面した際のショックや混乱に対する回復力を高めるでしょう」と歓迎の意を表しています。
Med Aditus社のディレン・タッカーCEOは、患者や市場のニーズを満たすために、連続モジュール製造、ブロックチェーンデータの活用、プレハブポッドなどの新技術を導入すると述べています。
同CEOは「私たちがキスムに持ち込むモジュール式連続製造技術は、アフリカで初めてのものになります。アフリカはこの技術のリーダーになり、人々が信頼できる安価な医薬品を入手できるようにするつもりです」と、新たな製造拠点として工場が機能することを期待しています。
同社は、ジャラモギ・オギンガ・オディンガ科学技術大学、マスエノ大学、ウジマ大学といった地元学術機関を活用し、医療産業と経済の両方に貢献するため、独自の教育訓練プログラムを開発するとしています。
狙いは国内、そして対岸
ケニアのルト大統領が掲げる重点政策の中には普遍的な健康の促進、つまり、誰もが医療にアクセスできる環境を整備することが含まれており、医薬品の国内製造も重要項目として位置づけられています。
ルト大統領は昨年10月、ケニアが東・南部アフリカ共通市場(COMESA)地域で最大の医薬品生産国であり、同地域市場の約50%を供給していることに言及し、「先進国市場が停滞している一方で、アフリカ市場は2030年までに560億から700億米ドル(5兆から7兆クシュ)に成長すると予想されており、この成長を利用するために、ケニアの医薬品産業を戦略的に位置づけなければならない」と発言しています。
今回、インド洋沿岸部や首都ナイロビ近郊ではなく、あえて向上をケニア西部に建設する意図としては、国内供給はもちろん、ビクトリア湖を挟んで対岸にあるウガンダやタンザニア等への輸出を視野に入れた判断でしょう。
現在、アフリカにおけるキーワードである『現地生産』が、医薬品分野でどのように進展するか。本事例は重要なベンチマークとなる可能性があります。
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