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<援助関係者&村落開発普及員の方は必読!>『SHEP』大特集!<前編>そもそもSHEPとはなんぞや?

開発援助関係者や協力隊の村落開発普及員の方ならば一度は耳にしたことがある『SHEP』事業。


2019年に横浜で開催されたアフリカ開発会議(TICAD7)では共同宣言が打ち出され、SHEPを通じて100万人の小規模農家がより良い暮らしを実現できることが目標に掲げられました。


近年では実証研究が進んだことにより、SHEPが持つ価値が改めて認識されつつあります。

前編ではSHEPの成り立ちから、なぜここまで注目を集めているかについて分かりやすくご紹介します。


SHEPって、何?


SHEPはSmallholder Horticulture Empowerment and Promotionの略語で、一言でいうならば、小規模農家が市場の需要を認識して(主に園芸作物の)生産・販売活動を行うようにするための生計向上事業です。


SHEPは2006年にケニア農業省と国際協力機構(JICA)の技術協力プロジェクトにおいて独自に開発された小規模農家支援のアプローチです。


従来の支援アプローチでは農家が「作って(から)売る」ことに注目が集まり、たとえばメイズ(とうもろこし)やトマト、玉ねぎを以前よりも多く作ることに成功したとしても、作った作物が地元市場で需要がなかったり、バイヤーに買いたたかれたり、値崩れしたり、中々収入の向上に繋がらない場合がありました。


そこでJICAが主導して、生産を起点にするのではなく、「売るために作る」という、販売に焦点を当てたアプローチとして事業を修正しました。


こうしてSHEPが生み出されましたが、特徴的なのは農家による市場調査、市場関係者等と農民グループとのマッチング(事業内ではお見合いフォーラムという名称)、農民グループによる対象作物やアクションプランの策定等が行われることです。


事業の流れとしては、あくまで農家の自主性を尊重し、市場調査等を終えた後、農家自身が「これは売れる!」と思った作物を選び、自ら出荷時期を決め、その作物を生産するための技術支援を行うという順番になります。


農家の気持ちに寄り添いつつ、自主性を活かした上で成果に結びつけるという、とてもJICAらしいアプローチといえます。


『情報の非対称性』と『自己決定理論』の概念を活用


SHEP事業を裏付ける根拠となる概念に『情報の非対称性』と『自己決定理論』があります。


情報の非対称性とはノーベル経済学賞を受賞したジョセフ・E・スティグリッツ教授の代表的な理論です。この理論は同教授がケニアに滞在した時に着目、発展させたことでも有名です。


たとえばケニアの農村部では多くの場合、圧倒的に市場バイヤーの方が情報を多く持っている一方、農家は市場価格や求められている品質、売れ筋の作物、代わりとなる市場バイヤーといった情報が不足しています。


このように、取引を行う両者の間で情報格差(情報の非対称性)がある時、適切な価格で取引がされなかったり、取引に余計な時間がかかりすぎたりして、取引自体が阻害されます。

そのため、SHEPでは市場調査やマッチングを行うことでこの課題を解決することで、農家の生計向上を実現するシステムを整備しています。


次に自己決定理論ですが、これはエドワード・デシ教授とリチャード・ライアン教授が提唱した動機付け(モチベーション)理論のことです。


この理論によれば、人間には生来持っている三つの心理学的欲求(自律性、有能感、関係性)があり、誰かから与えられた報酬よりも、自分自身の心の内から発せられるもの(内発的動機)によってこそ、モチベーションを高めて自ら行動を起こしていくという理論です。


技術協力などの援助事業は時に、援助側の思惑が強く出すぎて、対象とするターゲットがやってみたい、参加してみたいというモチベーションが沸かないような事例があります。


SHEPでは自己決定理論に基づき、農家が自発的に考えて課題に取り組むように仕向けたり、その結果得られる達成感や「自分でも出来るのだ」という有能感を積み重ねていく過程を重視し、内発的動機を引き出すことを意図しています。


SHEPの現在地


JICAの粋(すい)を凝縮した事業ともいえるSHEPですが、相手国からの評判が高く、各国で新規プロジェクトが始められています。


始めの頃はアフリカ全土へ広めるという目標も見られましたが、現在では地域を超え、アジアや中南米を対象にして展開されています。


特に、現在イスラエルとハマスによる戦闘で多数の被害が生じているパレスチナでは2016年から2021年にSHEP事業を実施しており、現地農家の生計向上に貢献したことは、人道的観点からいっても評価されるべきでしょう。


SHEPは開発事業という枠を超え、2018年にはJICAと三井物産で協力覚書が締結され、ビジネス分野とのコラボレーションが生まれました。具体的には、JICAがSHEPのノウハウを提供し、三井物産側で支援を小規模農家に提供し、生産された高品質な農産物を買い取る計画がマラウィで進められました。


JETROの調査では日系企業によるアフリカ進出が新局面を迎えつつある結果が読み取れますが、今後もSHEPとビジネス事業の連携事例が生まれる可能性があります。


ここまではSHEPの始まりや現在地について紹介してきましたが、そもそもSHEPは本当に効果があるのでしょうか?後編記事では実証研究の知見を紹介しつつ、SHEPを科学的に分析した内容をお伝えします。



(イメージ画像はUnsplashより。©Micheal Awala


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